虚実

虚実は、漢方薬の決定に重要な鍵となる証のひとつです。
「虚証」とは、病邪が体内に残っていないにもかかわらず、当人の精気や体力がすでに衰えてしまっている状態をいいます。虚証のタイプの人の特徴として、皮膚や筋肉が軟らかく、やせ型、顔色が青白くて見るからに弱弱しい、ということがあります。
このタイプの人には、体力低下を補う漢方薬が用いられます。

一方、「実証」は、逆に病邪が体内に残ってはいるものの、精気や体力が充実し、病気に対抗できる状態をいいます。実証のタイプの人は、皮膚や筋肉が硬く、緊張しています。弾力性があり、がっちりとした体格、血色が良く、行動的なタイプの人です。このタイプの人には、病邪を追い出す薬を用います。強力な発汗作用や下剤などの薬は、このタイプの人になら用いることが可能です。

また、虚証でも実証でもないタイプ、中間的なタイプの「中間証(間証)」というタイプもあります。

漢方薬は、それぞれの人の「証」に基づいて決定されるため、同じ下痢症状でも、虚証の人に対して、実証のタイプの人に用いる下剤などを用いるとかえって病状の悪化を招く恐れがあります。

また、証には、実証以外にも、陰陽(陰証と陽証)および、気・血・水という別の観点からのものもあります。
これらを総合的に判断して漢方医学の治療方針が決定され、漢方薬を用いることになるのです。現代医学ではなおらなかった病気が漢方薬で改善した、という例も数多くあります。しかし、漢方薬は万能薬ではありませんし、現代医学が得意とする分野があることも確かです。漢方医学が得意とするのはどのような分野であるかを見極めて治療を受けることも大切です。